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AI関連発明の外国での特許取得

~国ごとの判断の仕方を知っておこう~

2021.12.1 弁理士 八木 まゆ

 特許庁で開示されているAI関連の特許性に関する日欧比較事例に、新たに加えられた事例を紹介します。
<事例>
 【請求項1】
  ニューロンなど、ニューラルネットワークを学習するコンピュータによって実行される方法であって、各ニューロンは、重み付け係数と無効化されるそれぞれの確率に関連付けられており、複数の学習入力を取得すること、つまり、各学習入力に対し、以下のステップを繰り返し実施することを含む方法、
  それぞれの確率に基づき1つまたは複数のニューロンを選択し、
  選択したニューロンを無効化し、
  ニューラルネットワークを用いて学習入力の処理を行い、予測された出力を生成し、
  その予測された出力と参照値との比較に基づき、重み付け係数を調整する。
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 本事例の発明は、上図のように所謂「ドロップアウト」という、選択的にニューロンを無効化させるニューラルネットワークの「学習方法」です。特定のデータセットでの精度のみが向上してしまう「過学習」を回避できるものです。

<日本での特許性>
 日本国特許庁は、汎用的コンピュータを先行技術として、この請求項1の特許性を判断する場合、進歩性を有すると判断する、としています。汎用的コンピュータは、請求項1に規定した各ステップを実行しないし、設計事項でもなく、「過学習」を回避できるという有利な効果も得られるためです。

<欧州での特許性>
 欧州特許庁は、同じく汎用的コンピュータを先行技術とした場合、請求項1は進歩性を有しないと判断する、としました。コンピュータによって実行される方法であっても、「特定の方法」ではなく「ニューラルネットワークの働き」を規定しており、「数学的な手法」、謂わばアルゴリズムの実施に過ぎず、汎用コンピュータの手法よりも効率的であったとしても、それだけでは進歩性は認められない、とこの事例では判断されています。もし、このニューラルネットワークの技術的目的(用途、例えば分類器)と関連する出入力(分類器用のデータセット)を特定することができれば、進歩性が認められる可能性があるとのコメントが付加されています。

<米中での特許性>
 米国では、本事例に対応する米国特許US9,406,017が登録されています。 中国の審査では、請求項1は、アルゴリズムそのものに近く、「具体的な応用分野にも関わっていない」として「保護適格性」欠如を指摘される可能性が高そうです。中国の審査では、請求項1に「画像処理」、「音声データ」、「機械から取得したデータ」といった特定のデータが対象であるとの限定がされていないと、特許取得は難しいと思われます。

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