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2022.2.1 弁理士 野口 富弘
1.発明の概要
本件発明は、CAD(Computer-Aided Design)やCAE(Computer-Aided Engineering)で用いられる、4面体や5面体を含む任意の多面体を組み合わせて計算領域を分割する非構造格子を用いて数値計算を行うことができるデータ構造です(特願2019-569977号)。
2.審査過程の概要
(1)出願時の請求項
『数値計算すべき領域をセル複体に分割し、前記セル複体の双対複体を定め、前記数値計算に用いる物理量を前記セル複体および前記双対複体に割り当てた、データ構造。』
(「セル複体」は多面体を一般化したものであり、例えば、4面体は、4個の0次複体(頂点)、6個の1次複体(辺)、4個の2次複体(面)、及び1個の3次複体(バルク)に分割できます。「双対複体」は複体の構造を有する多面体の分割(メッシュ)を定義するものです。) |
(2)特許庁の判断
請求項に記載のデータ構造は、セル複体と、セル複体の双対複体を定め、数値計算に用いる物理量をセル複体及び双対複体に割り当てるものであるが、これはデータ要素の内容を定義したものに過ぎず、人為的な取り決めに止まるから、特許法の保護対象に該当しないと判断しました。
(3)補正後の請求項
出願人は、請求項を以下のように補正し(下線は補正箇所)、出願は特許されました。
『複数の演算器と前記演算器が演算に用いるデータを記憶するための階層型の記憶装置とを有するコンピュータにおいて形状および物理量を計算するためのデータ構造であって、
前記計算すべき領域を、前記形状に対応させてセル複体と双対複体に分解し、前記物理量を前記セル複体および前記双対複体に割り当て、
前記演算器が前記セル複体と前記双対複体に定められたホッジスター演算子とバウンダリ準同型を用いて前記記憶装置のデータを参照する、データ構造。』
3.保護対象となるデータ構造
(1)審査基準によれば、データ構造はプログラムに準ずるものとして保護対象となります。「プログラムに準ずるもの」とは、データの有する構造がコンピュータの処理を規定するものという点においてプログラムに類似するということです。
補正後の請求項は、「ホッジスター演算子とバウンダリ準同型を用いて記憶装置のデータを参照する」というコンピュータの処理を規定しています。
(2)また、データ構造は、プログラムと同様に、データの有する構造が規定する情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている必要があります。
補正後の請求項は、「複数の演算器と演算器が演算に用いるデータを記憶するための階層型の記憶装置とを有するコンピュータ」を用いて具体的に実現されています。
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