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2022.5.2 弁理士 八木 まゆ
「特許出願の非公開に関する制度」、いわゆる「秘密特許制度」が含まれている法律案が2022年4月7日に衆議院で可決されました。「秘密特許制度」は近い将来日本でも採用されます。
<秘密特許制度の背景>
「秘密特許制度」は、国家の安全上、機密とすべき技術について特許出願がされた場合、内容を公開しないという制度です(特許出願された技術は通常、原則として1年6月経過後に公開されます)。
国外へ流出すると安全保障に問題があることが懸念される技術については、特許出願をすると、全世界から閲覧可能に公開されますので、国外からの安全保障上の脅威となる技術に利用される虞がありました。しかしながら、国外への流出を防ぐために特許出願をしない選択をした発明者は、独自のアイディアであっても国内の他者の実施を防いだり、実施によるライセンス料を得たりすることができない、という問題がありました。
<秘密特許制度の概要>
「特許出願の非公開」の制度において特許出願は、右図のような手順により、特許庁にて「スクリーニング」され、その結果、対象となりうる発明であると判断されたものが内閣府に送られ「保全審査」されます。出願人の申立によっても「保全審査」の対象になり得ます。「スクリーニング」又は「保全審査」がされている間の特許出願は公開の対象から外され、審査請求は可能ですが特許査定が留保されます。
「保全審査」の結果、1年以内の期間を指定して保全指定されると、対象の特許出願は非公開及び特許査定の留保に加え、出願人でさえも、実施するためには内閣総理大臣の許可が必要になり、他の事業者との発明の共有も承認が必要です。国内優先権主張の基礎とすることは可能ですが、こちらも保全審査の対象となるでしょう。
保全指定は、期間の経過の都度、「保全審査」がされ、期間は延長可能です。保全指定された特許出願は、指定されている間、外国出願も禁止され、出願の取り下げも禁止されます。
なお、この秘密特許の対象は、核兵器の開発につながる技術及び武器の技術のうち、「安全保障上極めて機微な発明」を基本に選定することとされています。核兵器や武器へ"転用可能な"デュアルユース技術をも対象にすると、元の技術分野における実施や研究開発が阻害されることが懸念されるため、シングルユース技術を対象にすることが想定されています。
<各国における秘密特許制度>
従前より、G7では日本以外6カ国、G20でも日本、アルゼンチン、メキシコ以外の17カ国では、詳細な制度が異なるとはいえ、機密とすべき場合には特許出願内容が秘密になる制度が存在しています。また、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ブラジル、中国、インド、韓国、ロシア、トルコは、外国への出願が抑制される制度を採用しています。
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