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欧州統一特許制度がいよいよ開始

~出願ルートを適切に選ぼう~

 

2023.3.1 弁理士 八木 まゆ

 2023年6月1日に、欧州における統一特許裁判所(Unified Patent Court、以下UPCともいう)協定がようやく発効されます。「欧州単一特許」及び「統一特許裁判所」については、2017年2月の弊所特許関連ニュースでお知らせした当時から、イギリスが協定参加国でなくなったこと以外はほぼ変わっていません。いよいよ開始されるUPCの利用について記します。

<概要>
 「欧州単一効特許」は、協定参加国(ドイツ、フランス等17か国、他の8か国が順次参加予定)全てをカバーする権利です。「統一特許裁判所」は、協定参加国内での権利の有効性(侵害かどうか)について統括して判断する裁判所です。


<審査段階>
 欧州で権利を取る場合、従来通り、欧州特許庁(以下、EPO)へ出願するか、各国特許庁へ出願するかの2通りから選択できます。EPOは欧州特許条約(以下、EPC)の加盟国39か国での特許について統一的に審査する機関です。EPOの審査は、UPC協定の参加/非参加国を問わず、以後も継続します。
 EPOへ出願し、2023年6月1日以降に特許付与の判断がされた場合、協定参加国に対する「単一効特許」が取得できます(下図のルートA)。協定非参加国で権利を取りたい場合、ルートCでの有効化手続きが各国に対して必要になります。

欧州出願ルート

 

 例えば、ドイツ、フランス、イギリス、スペインで権利取得を目指し、EPOへ出願した場合、ドイツ、フランスでの権利については「単一効特許」が登録できますが、非参加国であるイギリス、スペインでの権利についてはルートCの手続きが必要です。UPC協定発効後原則7年~14年の猶予期間に限り、ドイツ、フランスについてもルートCでの権利有効化が可能です。
 各国特許庁へ出願するルートBでは、協定参加国、例えばドイツ特許庁に出願しても「単一効特許」は付与されません。また、協定参加国においてルートAとルートBとの二重で権利を保護することは許されません。
 いずれの国での権利化を目指すのか、「単一効特許」の要否、コストに基づいて、EPOに出願するか、各国へ出願するかを検討しましょう。


<権利取得後>
 既に協定参加国で取得している特許について、係争が起こった場合にはUPCで裁判が行われます。これを避け、各国の裁判所での判断をしてほしい場合には、「オプトアウト」の手続きが必要です。より早く「オプトアウト」したい場合、2023年3月1日から5月31日までの「サンライズ期間」に手続きをすれば、発効時点で「オプトアウト」したことにできます。


◆欧州での特許に関するご相談は河野特許事務所までお気軽にお問い合わせください。

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