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構成が付加されたことにより文言侵害

及び均等侵害が共に認められず

請求項において、排他的限定となる「のみ」の記載は厳重注意!


2023.4.3 弁理士 山田 浩忠

 1.事件の経緯
 移送装置の特許権(特許第4349999号)の侵害訴訟「東京地裁:令和2年(ワ)第17423号」で原告(特許権者)の主張が認められなかったため、原告は、知財高裁に控訴しました。原告の特許発明は、茶枝葉を刈り取る刈刃を備え、移送ダクト内に流す圧力風の作用のみによって、茶枝葉を刈刃から所定位置まで移送する移送装置に関するものです。被告は、被告製品における茶枝葉の移送は「回転ブラシによる機械的移送」と「圧力風による風送」を併用し、「圧力風の作用のみ」にて茶枝葉を移送しないため非侵害であると主張しました。「圧力風の作用のみ」の解釈が争点となり、東京地裁は、被告製品は「圧力風の作用のみによって」を備えず、非侵害であると判断しました。

 2.知財高裁の判決[令和4年(ネ)第10071号]
 原告は、被告製品は機械的移送を行っているが、回転ブラシを取り外した状態であっても、圧力風による風送によって十分に実用に足りる摘採をすることができ、回転ブラシがなくても、圧力風のみによって茶枝葉を移送できるから、「圧力風の作用のみによって」の構成を備える(文言侵害)と主張しました。更に、ブラシの回転作用が加わることで、茶枝葉が移送ダクト内に送り込まれている点で、本件発明と相違したとしても、被告製品は、均等なものとして本件発明の技術的範囲に属する(均等侵害)と主張しました。
 知財高裁は、「圧力風の作用のみとは文理上、刈り取り後の茶枝葉を刈刃から所定の位置まで移送するのに圧力風の作用だけが関与し、圧力風以外の作用が一切関与していないことを意味する」とし、回転ブラシの取外しについては「被告製品の取扱説明書には、回転ブラシを外した使用態様を説明する記載は存在しないことからすると、被告製品は、回転ブラシを取り付けて使用することが通常の使用方法である」としました。更に、均等に関しては、「圧力風の作用のみによって、その吹出口付近に負圧を生じさせ、この負圧吸引作用によって刈り取り直後の茶枝葉を刈刃後方側に引き寄せ、その後は茶枝葉を圧力風に乗せて、収容部など適宜の部位に移送するようにしたことが、本件発明の本質的部分であると認められる」とし、「被告製品は、本件発明の本質的部分を備えているものと認めることはできず、相違部分は、本件発明の本質的部分でないということはできないから、均等論を充足しない」ため、均等侵害の5要件の一つである「本質的部分でない(第1要件)」を具備せず、文言侵害及び均等侵害に該当しない判断(非侵害)しました。

 3.考察
 請求項において「のみ」を用いた排他的限定に関する解釈の厳格性を痛感する事例と言え、知財高裁の判断は妥当と考えます。均等論においては、「圧力風の作用のみ」が本件発明の本質的部分であると判断されているため、適用される余地がないと考えます。「圧力風の作用のみ」は出願段階で補正されたものですが、もし、「圧力風の作用を主たる動力として」と補正していたら、知財高裁の判断は異なったのではないかと、思われます。

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