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生成型AIによる発明の保護(米国)

〜AIを利用した新たなイノベーションを促進〜


2024.3.1 弁理士 八木 まゆ

 AI関連発明の発明該当性や、生成型AIが作成した絵画の著作性などについて、本ニュースで取り上げていますが、2024年2月、米国特許商標庁(US PTO)は、生成型AIが着想に貢献した「AI支援発明」について、発明として保護し得るとの見解を発表しました。

●「AI支援発明(AI-Assisted Inventions)」とは
 米国特許法において「発明者」は、発明の主題を発明または発見した個人又は個人の集合体を指すと定義されています(35 U.S.C. §100 Definitions)。したがって「AIが発明したアイディア」は、個人(法人でなく自然人)による発明ではないため、保護の対象となりません。しかしながら発表された見解での「AI支援発明」は、「AIが着想に貢献した発明」です。発明を構成する要素にAIが含まれるのではなく、謂わばAIが発案者の一部となっている発明を指します。US PTOは、上述の「発明者」の定義による判断はそのままとしながら、「AIが着想に貢献したものであっても、自然人による貢献がその発明にとって十分に重要な場合には、保護の対象とすることができる」としました。なお、この見解は、発表後に既に米国審査にて適用されています。

●「AI支援発明」の事例
 発表された見解と共に、どのような場合に発明として保護し得るかの仮想事例が提示されました。
 「ラジコンカーのトランスアクスル」という仮想事例では、トイメーカーに所属する自然人の2人が、自然言語を用いた生成型AIを利用し、初期案として回路図と概要を出力するようにプロンプトを入力します。US PTOは、この仮想事例において以下のように規定された発明について、保護し得るか否かを示しています。

・ ケース1: 生成型AIから出力された構成そのものを記述した独立請求項
→生成型AIに対して問題(プロンプト)を提示(入力)しただけでは、2人の自然人のいずれも重要な貢献をしていると認められず、保護し得ない、とされています。

・ ケース2: ケース1の請求項において材料を限定した従属
→当業者にとってよくある技術を、生成型AIからの出力に適用した程度では、2人の自然人のいずれも発明に重要な貢献をしているとは認められず、保護し得ない、とされています。

・ ケース3: 生成型AIから別の案として出力された構成に対し、2人の自然人が数値的条件を実験して規定し、新たな部品を加えた独立請求項
2人の自然人による重要な貢献があると認め、発明として保護可能、とされています。

・ ケース4: ケース3の請求項において、生成型AIからの製法の提案に基づき材料を限定した従属項
→従属項の限定要素が生成型AIによって提案されたものであっても、引用するケース3の請求項が保護可能である場合、限定要素の発案者がAIでも、発明として認められ得る、とされています。

・ ケース5: ケース1−4の発明者を、発明に用いられた生成型AIの開発者とした出願
→ケース1, 3, 4のように提案できる生成型AIを開発したとしても、発明に貢献したとは言えないので、生成型AIの開発者は、ケース1−4の発明の発明者となり得ない、とされています。

●考察
 自然人自らのアイディアの素案、バリエーション、又は限定事項に、生成型AIからの提案を入れたとしても特許となり得る、とされました。アイディア出しのため、自然言語による生成型AIを壁打ちのように用いて発想に至った発明も、個々の創意工夫が独自であれば権利化できる可能性があります。

◆ AI関連発明に関するご相談は河野特許事務所までお気軽にお問い合わせください。

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