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生成AI関連発明の進歩性

〜プロンプトの工夫で特許取得可能〜


2024.7.1 弁理士 難波 裕


 AI関連発明の特許出願件数の増加に伴い、特許庁は審査事例を拡充しています。本号では今年3月に発表された追加審査事例集 から、生成AIを用いた発明の進歩性を判断した事例を紹介致します。

1.事例概要(「特許・実用新案審査ハンドブック」附属書A5.事例38)
 本事例は生成AI(大規模言語モデル)に入力するプロンプトの生成方法に関する発明で、ユーザが入力する質問文に、当該質問文に関連する付加文章を追加することでプロンプトを生成するというものです。請求項1では、生成AIに入力可能な文字数には制限があるため、質問文と合わせた合計文字数が制限文字数以下となるように付加文章を生成することを特徴としています。
 また、請求項2では、付加文章を生成する具体的手法として、質問文をもとに関連文章を取得して複数のキーワードを抽出し、当該キーワードを用いて制限文字数以下の付加文章を生成することを特徴としています。

2.進歩性の可否
 特許庁は、請求項1に記載の発明は進歩性が否定されると判断しています。言語処理の技術分野において、情報処理量が過大にならないようにすることは当業者が通常考慮する自明な課題であり、そうすると、プロンプトが制限文字数を超える場合に、超過分の文字数を破棄してプロンプトを制限文字数以下となるように生成することは、当業者であれば容易に想到し得たものであると説示しています。
 これに対し、請求項2に記載の発明は進歩性が肯定されると判断しています。質問文の関連文章から抽出したキーワードを用いて付加文章を生成することは技術常識ではなく、当該構成により、質問文と関連性が高く、参考情報として適した付加文章を生成することができ、より信頼性が高く適切な回答文を得ることができるという、既存技術に無い有利な効果を奏するためです。

3.まとめ
 他の審査事例でも述べられていますが、既存の業務やサービスをAIに置き換えただけでは進歩性は認められず、個々のAI関連発明に固有の構成や効果を訴求する必要があります。特に生成AIでは、プロンプトエンジニアリングという言葉もあるように、プロンプトの作成方法に工夫が見られる場合が多く、既存技術との相違点となり得ます。そのため、プロンプトをどのように作成するか、そのロジックと具体例を出願に十分に記載しておくことが重要です。

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