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2025.1.6 弁理士 難波 裕
商標権は立体的形状(いわゆる立体商標)についても認められていますが、商品の通常の形状のみから成る商標に対しては原則として商標権が認められません(商標法3条1項3号。以下では「1項3号」と記載)。本号では、立体商標について商標登録の可否を争った判例を紹介します。
1.事件の概要(令和6年(行ケ)第10047号)
原告(東宝株式会社)は「シン・ゴジラ」の立体商標について商標登録出願を行ったところ、本願商標を指定商品「縫いぐるみ、アクションフィギュアその他のおもちゃ、人形」に使用するときは1項3号に該当するという理由で拒絶査定を受けたため、拒絶査定不服審判を請求しました。
審判では、本願商標が1項3号に該当するかと、商標法3条2項(以下では「2項」と記載)に該当するかが争点になりました。2項では、たとえ商標が1項3号に該当するとしても、使用された結果著名となり、自他識別力を有することになった場合は商標登録を受けることができる旨を規定しています。
しかしながら、審判でも本願商標は1項3号に該当し、かつ、2項に該当しないと判断され、拒絶審決が出されました。そこで原告は審決取消訴訟を提起しました。
2.知財高裁の判断
知財高裁は、本願商標は2項に該当するため、審決を取り消すとの判決を下しました。
知財高裁は、「シン・ゴジラ」の立体的形状は恐竜や怪獣をかたどった立体的形状と特徴が本質的に異なるものではなく、指定商品(おもちゃ)の形状そのものの範囲を出るものとまで認めることはできないため、本願商標は1項3号に該当すると判断しました。しかし、
@ 映画「シン・ゴジラ」は記録的ヒットとなり、審決時までの8年間で「シン・ゴジラ」の立体商標は指定商品に集中的に使用された
A 「シン・ゴジラ」はそれ以前のゴジラ・シリーズの形状を踏襲しており、その形状は一般消費者に広く認識されていた
B 「シン・ゴジラ」を含む「ゴジラ」の文字商標は原告の映画タイトルや映画に登場する怪獣の名称として著名である
C 「シン・ゴジラ」のフィギュアの写真を示して「何をモデルにしたフィギュアだと思うか」とのアンケートを実施したところ、多くの人が「ゴジラ」又は「シン・ゴジラ」と回答している
ことから、本願商標は指定商品に使用された結果、一般消費者が原告の業務に係る商品であることを認識できるに至ったもの(自他識別力を有することになったもの)と認めることができるとし、2項に該当しないとした審決の判断は誤りであると結論付けました。
3.まとめ
本判例が示すように、商標が商品の通常の形状のみから成るものであっても、使用された結果自他識別力を有することになったものについては商標登録を受けることができます。ただし、2項に該当するためには全国的に著名な商標である必要があり、ハードルが高いと言えます。
◆ 商標登録に関するご相談は河野特許事務所までお気軽にお問い合わせください。
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