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2025.3.3 弁理士 山田 浩忠
1.事件の経緯
遠隔操縦無人ボートの特許権(特許第3939710号)の特許権者(原告)は、同様の遠隔操縦無人ボート(被告製品)を製造販売する販売業者(被告)に対し、特許侵害訴訟を提起しました。特許発明は、初期位置に自動回帰する制御を備えることを特徴しており、自動回帰は、「一定時間以上前記遠隔操縦装置からの信号を受信しなかったと判断された場合(自動回帰発動条件@)、または、前記電源の残量が半分以下になったと判断された場合(自動回帰発動条件A)のうち、少なくともいずれか一方の判断が行なわれた場合に、前記初期位置に自動回帰させる」第1制御装置によって、行われます。これに対し、被告製品は、@では自動回帰を実行しますが、Aでは自動回帰を実行しません。原告は、@又はAのどちらかを充足すれば、自動回帰に関する構成要件を充足すると主張しました。
2.東京地裁の判決[令和5年(ワ)第70607号]
東京地裁は、自動回帰に関する構成要件について、『第1制御装置は、@及びAの各場合に自動回帰のための動作制御を行い得る構成をいずれも備えたものである必要があるか、いずれか一方の構成を備えた装置であれば足りるかについては、必ずしも明らかでない』と述べています。その上で、『本件発明は、遠隔操縦装置との通信途絶及び電源残量の不足という事態を具体例として示しつつ、そのような事態においてもなお紛失することなく、必ず回収できる遠隔操縦無人ボートを提供することを解決すべき課題とし、本件発明の構成を備えることによって、「一定時間以上遠隔操縦装置地の間の通信が途絶えた場合、または、電源の残量が半分以下になった場合」に、「自動的にボートを初期位置に回帰させることができ」、「ボートを紛失してしまうことがない」として、この課題を解決する作用効果が得られるとするものである』と述べています。従って、「第1制御装置は、自動回帰発動条件@に係る判断と同Aに係る判断のいずれもが行われ得る機構を備えることを前提として、そのいずれかの条件が満たされた場合に自動回帰のための動作制御を行う装置を意味するものと解される」と判断しました。これにより、被告製品は自動回帰発動条件Aを具備していないため、非侵害であると判示されました。
3.考察
請求項において、「A又はBである」とする選択的記載は比較的によく用いられ、これによりAのみの場合又はBのみの場合もよりも、権利範囲が広く解釈されるものとなります。しかしながら、本件においては、明細書の記載から、「そのような事態においてもなお紛失することなく、必ず回収できる」といった解決課題を参酌され、当該事態が電波不良及び電源残量不足を含むため、実質的に「又は」が「及び」として請求項が解釈されました。これに対し、明細書にて解決課題を過度に記載しないことに留意しつつ、発明が技術的にA又はBのいずれかでよい場合、請求項においては、A及びBを含む上位概念を定義した用語を用いる、又は、AとBとを別個の独立項とすることが、有効と考えます。
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