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米国特許庁長官は特許の再審査を命令可

〜 日本には無い制度 〜


2025.12.1 弁理士 水沼 明子

 米国で、登録済の特許に対して、米国特許庁長官による再審査命令が出されました。日本にも登録済の特許の有効性を再判断する無効審判等の制度はありますが、特許庁長官が職権で無効審判を開始することはありません。


1.対象特許の概要

 登録番号:米国特許第12,403,397号(以下本件という)
 権利範囲の概要:ユーザにより仮想フィールドに呼び出されたサブキャラクターが、状況に応じて自動的にまたはユーザの手動操作により、敵キャラクターと戦闘するゲームシステムに関する発明です。

2.経緯
 本件は、日本の特願2022−129632(特許第7482585号)を基礎とするパリ優先権を主張して、米国に出願されました。
 米国では、補正も、拒絶理由通知もなく登録されました。時系列の概要を以下に示します。
  2022年 8月16日:日本出願日(優先日)
  2023年 3月 1日:米国出願日
  2025年 7月 8日:許可通知(特許査定)
  2025年 9月 2日:登録
  2025年11月 3日:特許庁長官による再審査命令

3.特許庁長官による再審査命令の概要
 特許庁長官は、審査段階で考慮されなかった2件の米国特許公開公報に基づいて本件の特許性に疑義があるとして、すべての独立請求項に対する再審査を命じました。

4.再審査制度の概要
 登録された特許の有効性に疑義がある場合に適用される制度の一つに、再審査があります。
 再審査は誰でも請求可能です。再審査の審理対象は、文書に基づく新規性と非自明性のみです。再審査は、許可通知を出した審査官とは別の審査官が担当します。
 米国特許法(35 U.S.C.§303)に、特許庁長官は、自己が発見した特許文献または刊行物に基づいて特許性に疑義がある場合には、職権により再審査を開始できる旨が規定されています。
米国特許庁の統計によると、特許庁長官の職権による再審査は、再審査全体のうちの約1%です。職権による再審査を開始する旨の特許庁長官による命令書は公開され、その命令書には、特許性の疑義の原因となった文献等が記載されます。しかし、文献等が発見された経緯については、公表されません。
 文献等が発見される契機としては、たとえば米国特許庁内部での品質監査、ITC(米国国際貿易委員会)の調査、第三者による情報提供等があり得ます。ただし、本件については、第三者による情報提供は実施されていません。

5.再審査以外の制度の概要
 特許の有効性に疑義がある場合に適用される制度には、PGR(付与後レビュー)と、IPR(当事者系レビュー)もあります。これらについては、特許庁長官が職権で開始することはできません。

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