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2026. 5. 1 弁理士 野口 富弘
1.事案の概要
被告は2つの国内出願1、2を基礎とする国内優先権主張出願をし、発明の名称を「噴射製品及び噴射方法」とする特許権(特許第6539407号)の設定登録を受けました。
原告は無効審判を請求したが、特許庁は本件審判の請求は成り立たないとの審決をしたので、原告がその取消しを求めて控訴した事案です(令和5年(行ケ)10057号)。
2.本件発明の要旨となる技術的事項
本件発明の要旨となる技術的事項は「…、前記害虫忌避成分はイカリジンの成分であり、…」です。
3.審決の概要
特許庁は、国内出願1の第1優先日に係る優先権の主張の効果が認められると判断しました。そして、公然実施発明を引例とする本件発明の新規性欠如を理由とする無効審判の請求は成り立たないとの審決をしました。
4.知財高裁の判断
知財高裁は、本件発明の発明特定事項は、国内出願1の特許請求の範囲に記載されており、国内出願1の明細書等において、実施例として記載されているのは、害虫忌避成分としてEBAAPを含む噴射製品のみであり、害虫忌避成分としてイカリジンを含む噴射製品に係る実施例は、国内出願2の明細書等に追加されたものであるが、本件発明の効果に関するメカニズムや構成要件の技術的意義がBAAP及びイカリジンに共通して適用されることが国内出願1の明細書に記載されており、国内出願1の明細書に記載されたEBAAPを配合した噴射製品と同様にして、イカリジンを配合して噴射製品を製造することができる(実施可能)。と判断しました。そして、当該実施例は、本件発明及び国内出願1の特許請求の範囲に記載された発明の実施に係る具体例であり、国内出願1の明細書等に記載された技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件発明は、国内出願1に基づく国内優先権の効果が認められるとして、原告の控訴を棄却しました。
5.国内優先権主張の効果が認められるか否かについて
後の出願の特許請求の範囲の文言が、先の出願の明細書等に記載されたものであっても、優先権主張の効果が認められない場合があります。すなわち、後の出願の明細書に、先の出願の当初明細書等に記載されていなかった技術的事項を記載することにより、後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項が、先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えた場合、その超えた部分は優先権主張の効果は認められません。
本事案では、国内出願2に追加された実施例は、本件発明及び国内出願1の特許請求の範囲に記載された発明に係る具体例を確認的に記載したものと解釈され、国内優先権の主張の効果が認められました。
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