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特徴的デザインを有する量産実用品の法的保護  

〜著作権ではなく、意匠権で保護〜


2026. 6. 1 弁理士 水沼 明子

 1970年代に発売されて以来、世界的なロングセラー商品になっている子供用椅子のデザインについて、著作物には該当しないという最高裁判決(最高裁 令和7年(受)第356号)が出ました。

1.訴訟の概要
 上告人(以下原告という)は、ノルウェーの家具メーカーです。被上告人(以下被告という)は、日本の子供向け木製品メーカーです。原告は、被告の販売している子供用椅子が、原告が長年販売している椅子のデザインに関する著作権を侵害すると主張して、損害賠償等を請求しました。

2.過去の経緯
 原告は、過去に複数回、それぞれ別の日本企業に対して同様の訴訟を起こしています。そのうち、平成27年の知財高裁判決(知財高裁 平成26年(ワ)第8040号)では、原告の椅子はデザイナーの個性が発揮された創作的な表現を含むため、「美術の著作物」に該当すると判断されました。本件について、第1審(東京地裁 令和3年(ワ)第31579号)も、第2審(知財高裁 令和5年(ネ)第10111号)も、被告の椅子から原告の椅子の表現上の本質的な特長を直接感得することはできないため、被告の椅子は原告の著作権を侵害していないと判断しました。なお、原告は著作権に加えて不正競争防止法違反等についても主張しました。第1審、第2審とも原告の主張は認められず、原告は敗訴しました。最高裁は著作権に関する判断のみを上告受理の対象としました。

3.最高裁の判断:最高裁の判断の概要を以下に示します。
(1)意匠法と著作権法との関係
 量産実用品の形状を、意匠法と著作権法との両方で二重に保護することを認める場合、意匠法の存在意義を損なうおそれがある。意匠権の存続期間満了後も著作権で保護される場合、産業の発達への寄与という意匠法の法目的が阻害される恐れもある。



(2)量産実用品が著作権で保護される場合
 量産実用品の機能とは関連しない創作的な装飾が付加されている場合、その付加部分は「美術の著作物」であり、著作権法で保護される。しかし、このような付加部分を有するのは、量産実用品としては例外的なものである。
(3)原告の椅子の評価
 著作権法では、美術工芸品は美術の著作物であり保護の対象と明示的に定めている。しかし原告の椅子が美術工芸品ではないことは明らかである。  原告の椅子でデザインの特徴とされている部分は、子供用の椅子としての機能に由来する部分である。したがって原告の椅子は、著作物に該当しない

4.まとめ
 今回の最高裁判決により、量産実用品に関する著作権の主張は難しくなりました。量産実用品の特徴あるデザインを保護するには、意匠登録出願をすべきです。

◆知的財産権に関するご相談は、お気軽に河野特許事務所までお問い合わせください。

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