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AI生成作品は著作権で保護されるか?

〜 米国連邦地裁は保護の対象外と判断 〜


2023.12.1 弁理士 水沼 明子

 2022年8月の本ニュースにて、「DABUSと名付けられた機械(A machine called "DABUS")」を発明者とする特許出願に対して欧州特許庁審判部が拒絶審決を出した旨を紹介しました。この特許出願の出願人であるThaler氏は、AI生成物の米国著作権登録にも挑戦しましたが、裁判所は著作権保護の対象外であると判断しました。その概要を紹介します。

1. 事件の概要 (事件番号 22-1564(BAH))
 Thaler氏は、米国著作権局に、"A Recent Entrance to Paradice" というタイトルの絵画作品の著作権登録を申請しました。
 米国著作権局は、この作品には "Human authorship(人間の著作である)"という要件が欠如しているとして、著作権登録を拒絶しました。Thaler氏は、著作権局の判断を不服として、連邦地裁に提訴しました。

2. .
連邦地方裁判所の判断
 過去の裁判例によると、著作権は一貫して人間による創作物に対してのみ認められており、非人間(例:神、動物)による創作物に対する著作権が認められた例はありません。著作権法は、制定当初から、著作権の保護により人間の創造的行為を奨励して、公共の利益に寄与することが法目的であると理解されてきました。
 本件に関しては、Thaler氏自身が著作権登録申請書において「機械上で動作するコンピュータアルゴリズムである "Creativity Machine" によって自律的に作成された」作品であり、"Creativity Machine"の所有者であるThaler氏が著作権を引き継ぐと明記しています。
 裁判の過程においては、Thaler氏は「AIに指令を与えて、作品を生成させた」、「AIはThaler氏により完全にコントロールされていた」等と、著作権登録申請書の記載内容とは矛盾する主張を提示しました。しかし、このような新たな主張は本裁判では考慮しないと判断されました。
 したがって本裁判の争点は「コンピュータシステムによって自律的に生成された著作物は、著作権による保護対象になるか否か」のみであり、結論は著作権局の判断通り「保護対象にならない」であると判断されました。

3.
特許のケースとの相違
 特許のケースでは、「特許法上の発明者は、自然人に限られる」と判断されました。
 本件では、「コンピュータにより自律的に生成された作品である」という、Thaler氏の当初の主張を認めたうえで、著作権法による保護の対象外であると判断されました。

4.
新しいテクノロジーと著作権との関係について
 19世紀後半には、写真が著作権保護の対象になるか否かが米国連邦最高裁で争われました。この裁判では、写真家は被写体の選択等を通して作品である写真を創造的にコントロールしているため、写真は写真家の著作物であり、著作権保護の対象であると判断されました。この最高裁判決は米国著作権法第101条(定義)に反映されています。
 AIを利用して作品を制作したアーティストを「作者」であると認める基準や、保護の範囲については、米国でも日本でも検討が進められており、将来的には各国で明確な指針が出る可能性があります。

◆著作権について質問・相談がございましたら、お気軽に河野特許事務所までご連絡ください。

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